この10年ほどで、すっかりスマホという存在が生活の中に溶け込みました。私ももう、ガラケーを使っていたころのことがよく思い出せないほど、すっかりスマホになじんでいます。
けれどもそのスマホは、その便利さと親しみやすさ故に簡単に陥る落とし穴も持っているのです。
その落とし穴を「スマホ依存症」と言います。特に若い人にはSNSなどの影響もあり、片時もスマホを手放せないような人も多いようです。
今回は初めての境遇や環境への不安から、非常にその落とし穴へはまりやすい状態にあると言える、産後のお母さんのスマホ依存症と、その対策についてお話ししたいと思います。
目次
スマホ依存とは?
説明
スマホ依存とは、文字通りスマートフォンに依存している状態です。ただし、スマホという機械そのものに対してよりも、そこからつながるネット社会とそこで様々な欲求が満たされることへの依存という要素が強いことが、他の依存症(たとえばニコチンやアルコール)とは異なる点です。この要素だけに着目するとスマホ依存ではなくデジタル依存とも呼ばれます。
スマホを必要以上に操作することにより、
- 社会生活上、やるべきことをやれなくなる(生活態度の悪化)
- 特に現実生活で、人とのコミュニケーションがうまく取れなくなる(人間関係の悪化)
- 肉体へのダメージ(ストレートネック、肩や首のコリ、頭痛やめまい、スマホ指やスマホ肘など)
といった、様々な弊害が出てきます。これらを総称してスマホ依存症(スマートフォン依存症)ということが多く、現代社会における大きな問題となっています。
診断
病気として確定診断を受けることはあまり多くないと思いますが、ネット上には多数の依存症チェックを行えるサイトがあります。
マイナビ学生の窓口 【スマホ依存度診断】あなたも陥ってない? スマホ中毒度をチェック!
こちらは若い人向けサイトですが、スマホ依存の簡単な診断にはぴったりです。
こちらはスマホ依存ではなくネット(デジタル)依存のチェック項目となっていますが、一般的な設問のほかに青少年用のチェック項目もあって、お子さんの様子を判定するのにも使えますよ。
スマホ依存の原因
一般的に
スマホは道具としてはとても便利なもので、特に何かを満たしたい時に利用する頻度が高いと思います。その「何か」は、知識欲だったり、食欲や物欲、承認欲求の充足だったりと様々ですが、スマホをなぜ触るかというそもそもの動機が徐々に拡大した結果、すべての行動がスマホに結びつくようになると依存症まっしぐらです。
妊婦・産後の女性に特化した原因
外出が難しいこと
妊婦さん、また産後すぐで赤ちゃんの世話に追われるお母さんには、どうしても行動の制限、特に「外出が難しい」という大きな変化が出てきます。すると、どうしても人との交流も減りますし、買い物などにも出にくくなります。
少し前までは、それらはとても解決しにくい問題でしたが、今はネット通販やSNSを通した友人知人との交流にスマホが大活躍するようになり、そういった面では各段に便利になりました。
けれども、その便利さは同時に依存症の入り口になりやすいのです。
初めての体験の怖さ(特に初産の方)
初産の方はもちろんのこと、二人目三人目のお子さんが生まれた方であっても、子供の発育や病気などの具合は一人一人違うものです。子供が今までに見たことのない様子を見せたときなど、そばに相談できる人がいればいいのですが、ワンオペ育児で奮闘しているママさんは、すぐに頼れる相手としてスマホの向こうに答えを求めてしまうのも無理のない心境でしょう。
スキマ時間でも何かができる
たとえば子供がちょっと眠ってくれた短時間に見る動画、聴く音楽、遊ぶゲーム。楽しみ方はいろいろありますが、スマホであればすぐにその楽しみに手が届き、味わうことができます。外出できないこととも重なる部分がありますが、家の中にいて、使える時間が短時間でも何らかの充足感が味わえるのは、広大なネット世界へと簡単に入り込めるスマホという端末ならではの特徴でしょう。
スマホ症候群による主なデメリット
肉体的なもの(派生する体の不具合)
先にも挙げましたが、スマホ依存によって引き起こされる肉体的なダメージには次のようなものがあります。
ストレートネック
ヒトの首の骨は頸椎という小さな骨で構成されていて、ふつうは、横(左耳の方向)から見ると、ゆるく「く」の字を描くように重なっています。つまり、自分にとって前方向に曲がっているのが普通の状態です。
ところが、スマホを見ることで猫背や前傾の姿勢を多くとっていると、この頸椎の重なり方が変わってきて、首の形が全体的にまっすぐになってきます。これがストレートネックです。
ストレートネックは、本来「くの字型」の動きによって頭の重さをばねのように支えている首の骨全体の働きを妨げ、頭の重さが直接首・肩にかかるようになることで、その周辺のコリや痛みを引き起こします。ひどくなると激痛やシビレになることもあり、更に重症になると周辺の骨やその間にある軟骨までもが変形して、ヘルニアや関節症といった病気にもつながる、非常に怖い症状です。
首肩コリ
ストレートネックからも引き起こされますが、腕や肩を長時間使うことで、単純な首コリ、肩コリにもなります。慢性的な首肩コリは体を非常に疲れさせますから、そうでなくても体力を使いがちな小さい子のママさんには避けてもらいたい症状です。
頭痛・めまい
上記の首肩コリから、またスマホを見続けることでの目の疲れから、頭痛やめまいを起こすことも多いです。日常的に続く頭痛は非常なストレスを引き起こし、精神的にも非常に不安定になります。お子さんや旦那さんにいつも笑顔を見せるためにも追っ払いたい症状ですね。
スマホ指・スマホ肘
スマホ指は、スマホの上で同じような指の動きを繰り返すことで、指の筋肉や筋に疲労が蓄積して痛み出す、いわゆる「腱鞘炎」の一種です。
スマホ肘も同様に、動きの反復で起きる肘関節の症状で、一般的には「テニス肘」と呼ばれる症状です。
公益社団法人日本整形外科学会 / テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
これらも継続する痛みを引き起こすものですから、こうならないように普段から気をつけたいものです。
精神的なもの(いわゆる依存症の症状)
買い物依存
ネットショッピングの手軽さと便利さからの、買い物依存症に陥ることが考えられます。
また、依存とまでは言えなくても、便利であるがゆえに、あるいはネット決済という現金を伴わないやり取りへの不慣れから、ついつい一度の買い物の額が多くなり、請求額に真っ青になる・・・ということもままあります。
SNS依存
SNSの隆盛以前も、ネットワークを介することでの人と人とのつながりは強化されてきましたが、一人が一台(以上)の携帯電話やスマホを持つことが普通になってきてからのこういったつながりは、逆にそれらを失うことへの過剰な不安を抱かせるようになりました。同じ境遇や環境にある人との同調やつながりが常に傍らにあることで、心の平穏を保つことができる一方、そこに生じる不和や反発が、従来の人間関係で生じる以上のストレスを生んでしまうのです。
また、若いお母さんであれば特に、結婚前・妊娠前には頻繁に友人と遊びに出たり、食事に行ったりしていた人も多いかもしれません。「仕事を辞めた」「環境が変わった」という人も多いでしょう。そういった環境の変化が大きいと「せめて以前の知人とはネットでつながっていたい」という欲求も強くなってしまうのは、ある意味で当然のことと言えます。
操作時間が増えることでの生活への影響
スマホをいじりながら(見ながら・・・ではなく)料理は出来ません。掃除や洗濯も難しいでしょう。まして赤ちゃんをあやしたり、ミルクをあげたりとなると・・・。もちろん職人技の如く、スマホを軽快に操作しながらこれらの生活動作を行える人もいるでしょうけど、大概の人はスマホに目を向けていれば、他のことはできないか、やってもおろそかになってしまうのが普通でしょう。人の話にも耳を傾けきれず、生返事や聞き流しになってしまうことも考えられます。
デメリットの解決から生まれるメリット
スマホ指や首肩のコリがもたらす肉体的な痛みが解消できれば、生活行動が非常に楽になりますし、慢性的な痛みがなくなることで精神的にも安定します。
また、スマホを一日中いじっていた人が、少しでもその時間を短縮できればその分だけ、他の行動のための時間の確保ができます。
こうしてまとめてしまうと大変些細なことにも思えますが、これらのメリットがもたらす生活への影響は非常に大きなものです。
対策
原因の解消
世にスマホ依存症の治療法(具体的な手段)というのは溢れていますが、それらは「本来必要ではないスマホ操作を減らす方法」でしかありません。
これまでに挙げた、新米ママさんの依存につながる懸念のあるようなスマホの操作には、それなりの必要性と事情、あるいは目的のあることが多いです。ここではその点を注視して、ちょっと抽象的にですが、できる対策についてお話ししたいと思います。
旦那さんの協力が大事!
特に精神的な依存症への対応、言い換えれば、小さな子供を抱えたお母さんが健全な社会生活を送るためには、家族の協力が必須です。
お母さん自身のご両親や旦那さんのご両親、頼れるお友達などが近所にいれば大変にありがたいことですが、なかなかそうはいきません。
やはり家族、つまり旦那さん、またはある程度以上の年齢になっていれば上のお子さんの力を借りることが必要になってくるでしょう。
肉体的な症状に対して
スマホを長時間操作していることにより、「ある一定の姿勢を長時間取り続けてしまうこと」が、ほとんどの肉体的な不調の原因です。
自分で一定の時間を決めてアラームなどをかけ、その時間が来たら一旦スマホを手放しましょう。スマホ端末が対応していれば、一定の時刻に再起動をかけてしまうのも有効です。
スマホに強制ロックをかけるアプリ、なんてものもあります。
Flipd: Focus & Productivity
Flipd Inc.無料posted withアプリーチ
英語だらけでわかりづらいところもあるかも知れませんが、こちらも一緒にご覧になるとわかりやすいですよ。
そうしてスマホを手放したら、何か他のことをしましょう。ちょっとした片づけもの、台所で何かを飲む、トイレに行く、なんでもいいです。そうやって、何かに促されてでもスマホの操作を一旦取りやめて、他のことに気を向けることが大事です。
こうして短時間でスマホの操作をやめることは、肉体的なダメージに対しても有効な手段ですが、もちろん精神的な依存症状に対しても有効です。
精神的な症状に対して
先ほどもお話ししましたが、精神的に不安定であるが故にスマホに寄りかかっている新米ママさんが、そのスマホ依存の状態から抜け出すには、本人の意思と同じくらい、ご家族の優しい気持ちと協力が必要です。
心配や苦労をたくさん抱えたお母さんが、すぐそばに頼れる(頼ってもいい)人がいないとき、その向こうにたくさんの人間が生きているスマホの(あるいはネットの)世界に助けを求めてしまうのはある意味当然のことなのです。それを踏まえたうえで、こういった手段を試してみましょう。
- 家族にいろんなことを話してみる、頼ってみる
- スマホも「一人の友達」だと思って、あまり頼りすぎない
- スマホを使わず、また一人でも手軽にできる趣味や息抜きを探す
疲れたとき、悩んだとき、何かを楽しみたいとき、いろんなことがあると思いますが、スマホ「だけに」頼ってしまわないように、いろんなやり方を探して試してみるのがいいと思います。
対症療法
根本的な原因の解消が難しくても、それぞれの症状に対応した対症療法は可能です。
首肩のコリはストレッチや軽い運動で軽減できます。
スマホ指、スマホ肘は結局操作時間自体を短くしないと難しいですが、左右両方の手で操作できるようにしたり、手指のマッサージをすることである程度抑えることはできます。
精神的な症状については対症療法というのは難しいですが、スマホに関連して何か失敗してしまったら、反省はしてもあまりくよくよせず、自分自身で「次からは気をつけよう!」と前向きに考えるようになれれば、自然とスマホにも頼らない気持ちになれるかもしれませんね。
まとめ
- スマホ依存症とは「スマホに頼りすぎること」
- スマホ依存症にはたくさんのデメリットがある
- でも怖がりすぎないでいい、対抗する方法もたくさんある
- スマホには頼りすぎないように頼ることで、生活全体が便利にも楽しくもなる
- スマホ以外にも頼れる存在を作ろう
スマホはあくまでも「道具」です。うまく活用すればものすごく生活は便利にも豊かにもなりますが、使い方を間違えれば簡単にいろいろな病気(病的な症状)の原因にもなってしまうのです。
この点に気を付けて、新しく増えた家族と一緒に、さらに豊かな家庭を築くことを目標に、楽しい日々を送りたいものですね!