日本の伝統的な床材である畳。布団をしけば寝室に、テーブルを置けば応接室にと多目的に使えるのも畳の魅力ですよね。最近は畳のない家も増えてきましたが、やはり、畳の匂いや素足でくつろげる畳は落ち着きを感じますよね。
そんな畳ですが、いつもどんな風に掃除していますか?天然素材だからこそ癒される反面、実はとてもデリケートで傷みやすいんです。
今回は普段の畳の掃除方法、シミやカビができた時の対処法をご紹介したいと思います。
目次
畳の特性
畳は芯にあたる畳床と、表面の畳表でできています。畳床はわら、畳表はイ草という天然素材が使われています。普段なにげなく使っている畳ですが、とても優れた特性があります。
- 吸放湿性
- 断熱性・保温性
- 弾力性
- 吸音効果
- 難燃性
- 空気の浄化
●吸放湿性
畳は水分を吸収し、乾燥してくるとその水分を放湿してくれる性質があります。畳一畳分で500mlの吸湿力があるといわれています。高温多湿の日本にはまさに適した素材ですね。
●断熱性・保温性
畳に使われているイ草の中にはふわふわしたスポンジのようなものがつまっています。この中にはたくさんの空気が含まれています。空気は熱を伝えにくい性質があるので、この空気が夏は暑さを遮断し、冬は冷たい空気を遮る断熱材のような役割をしてくれます。
夏は涼しく冬は暖かく「天然のエアコン」とも言われているんですよ。
●弾力性
畳床の中の稲わらの中に含まれている空気が衝撃を弱めてくれます。
●吸音効果
畳床の中の稲わらの中に含まれている空気が音を吸い込んでくれます。
●難燃性
畳床は40cmの稲わらを4cmに圧縮して作られています。紙は1枚だと燃えやすいですが、電話帳のように厚いと燃えにくいように、畳も圧縮されているので燃えにくいんです。
●空気の浄化
イ草の中のスポンジには小さな穴があり、二酸化窒素を吸着する性質があります。そのおかげで空気が浄化されます。
畳ってこんなに素晴らしいものだったんですね。でも、畳は湿気に弱く、デリケートで痛みやすい面もあります。ですから、掃除するときは気をつけないといけません。
掃除機をかける時の注意点
「畳は目に沿って掃除する」
よく耳にしますね。でも、畳の目の方向がわからない方は結構多いのではないでしょうか?
「畳の目」は下の写真の矢印の方向です。畳は矢印の方向に掃除するのが基本です。
引用:和室屋いはん
畳は痛みやすいので、掃除機をかける時は、押し付けずに優しく浮かせる感じでかけましょう。畳を傷めないように、掃除機の本体は持ち上げてかけるようにしてください。ハンディタイプの掃除機があれば、そちらを使うといいですね。
畳1枚ずつ目に沿ってゆっくり(畳1枚を40~60秒かけて)掃除機をかけていきます。この時掃除機がヘリにかからないように注意しましょう。(ヘリは上の写真では青い部分です)ヘリが擦り切れてしまうので、畳が早くダメになってしまいます。
自動掃除機は畳の目に沿って掃除できないので使わないでくださいね。
ほうきで掃くメリット
畳の掃除は、実は掃除機よりもほうきの方が適しています。
ほこりを吸い取る掃除機より、ほこりをはき出すほうきの方が、畳の隙間の汚れが取りやすく、きれいになるんですよ。
電気代もかからないし、掃除機を出して、コード引っ張り出して、コンセントに挿し・・・なんてするよりも、手軽にササっと掃除できるのでおすすめです。
畳の掃除のために、あえてほうきを買う必要はないと思いますが、ほうきがあるなら、ぜひ、ほうきを使って掃除してみてください。
雑巾がけの注意点
畳掃除は基本的に「ほうきで掃いて雑巾で乾拭き」で十分です。この時も、畳の目に沿って拭くのを忘れないでくださいね。
畳がベタベタするなど、乾拭きで取れない汚れの場合は、固く絞った雑巾で拭いていきます。畳は湿気に弱いので、水拭きするときは注意が必要です。
- 清潔な雑巾で
使い回した雑巾は雑菌がついているので、それが畳についてしまいます。畳は直に座ったり寝そべったりするので、清潔なものを使うようにしましょう。マイクロファイバーを使うと汚れがよく落ちます。
- お湯を使う
ベタベタした皮脂汚れなどは、お湯を使った方が、ゆるんで落ちやすくなります。
- 雑巾を固く絞る
畳は水分が苦手です。水分が残っているとカビの原因にもなります。できるだけ雑巾は固く絞って水拭きし、その後は乾拭きし、窓を開けて換気し、よく乾燥させるようにしましょう。
コロコロはNG
畳の掃除にコロコロ(粘着式カーペットクリーナー)はNGです。
コロコロは粘着力が強いので、畳のイ草をほつれさせたり、毛羽立たせたりしてしまいます。また、コロコロで取れるのは表面の汚れだけで、畳の目の間に入った汚れやダニは取れません。
畳を毎日コロコロで掃除していたら、1~2年で畳がボロボロになったという話も聞いたことがあります。畳が痛むので、絶対コロコロは使わないようにしてくださいね。
シミをつけてしまったら
ジュース・コーヒー・醤油などのシミ
- すぐに乾いたタオルで拭き取る
- 汚れに塩をふりかけ、塩が湿ってきたら歯ブラシやスポンジで畳の目に沿ってこする
- 掃除機で塩を吸い取る
- 固く絞った雑巾で拭き、乾拭きし、十分乾燥させる
ペットのおしっこなどのシミ
- すぐに乾いたタオルで拭き取る
- 汚れに塩をふりかけ、塩が湿ってきたら歯ブラシやスポンジで畳の目に沿ってこする
- 掃除機で塩を吸い取る
- 固く絞った雑巾で拭き、乾拭きし、十分乾燥させる
- 臭いが気になる時はエタノールで拭く
インクのシミ
- キッチンペーパーやタオルで汚れを吸い取る
- 牛乳を染み込ませた布で拭き取る
- 水拭き、乾拭きを繰り返す
時間が経つと取れなくなってしまいますので、シミがついた時はすぐに拭き取るようにしましょう。擦るとシミが広がるので、畳の目に沿ってたたくように拭くのがポイントです。
日が経ったシミは、薄めた酸素系漂白剤をタオルに染み込ませ、たたくように拭き取ってください。ただし、漂白剤は畳が変色する可能性があるので、注意してくださいね。
カビが生えた時には
畳には吸湿性があるので、湿度が高い状態が続くとカビが生えてきてしまいます。新しい畳ほど吸湿性が高いので、カビが発生、繁殖しやすくなります。
カビを見つけた時のNG行動
ついやってしまいたくなりますが、カビを見つけた時にやってはいけないことがあります。
- 水拭きする
- 乾拭きする
- いきなり掃除機をかける
●水拭きする
畳は水分が苦手です。さらにカビが生えるので絶対水拭きしないでください。
●乾拭きする
水拭きではないので大丈夫と思いがちですが、畳の目隙間にカビが入り込んで、取れづらくなってしまいます。
●いきなり掃除機をかける
掃除機の排気口からカビの胞子が撒き散らされてしまいます。
カビの取り方
- エタノール
- スプレーボトル
- たわし(歯ブラシでもOK)
- 雑巾
- カビ全体にエタノールをスプレーし、20分程おく
- たわしでカビをかき出す(畳を傷めないように優しくこする)
- 浮き出たカビを掃除機で吸い取る
- 仕上げにエタノールをスプレーし、雑巾で畳の目に沿って乾拭きする
重度のカビの取り方
黒カビなどエタノールだけでは除去できないカビは酸素系漂白剤と重曹を使って掃除します。ただし、これは最終手段と思ってください。重曹を使うと畳が変色するので、重度のカビをどうしても除去したい時だけにしてください。
- エタノール
- 酸素系漂白剤
- 重曹
- スプレーボトル
- 歯ブラシ
- 雑巾
- 酸素系漂白剤と重曹を1:1の割合で混ぜ、水を少し入れペースト状にする
- 1をつけた歯ブラシで優しくこする
- 浮き出たカビを掃除機で吸い取る
- 仕上げにエタノールをスプレーし、雑巾で畳の目に沿って乾拭きする
アルカリ性の重曹にイ草が反応し、畳を変色させてしまいます。普段の掃除には重曹は使用しないでください
もし、個人では手に負えない場合は、業者に頼むか畳の交換を考えた方がいいと思います。
カビの予防法
カビの原因は湿度・気温・栄養です。特に梅雨の季節は湿度と気温が高い状態が続くので、注意が必要です。普段から以下のことに気をつけましょう。
- 窓を開け換気をする
- 洗濯物の部屋干しはしない
- 布団をしきっぱなしにしない
- カーペットをひかない
- まめに掃除する
特に新しい畳は吸湿性が高いので、最初の1~2年の間はカビが生えやすくなりますので、気をつけましょう。
1か月に1度、20倍の水に薄めたお酢で拭くのも除菌効果があります。ただし、お天気のよい乾燥した日に行うようにしましょう。
普段からまめに掃除と乾燥・風通しをするだけで十分カビ予防になります。
まとめ
- 畳には吸放湿性・断熱性・保温性など多くの優れた特性がある
- 畳掃除の基本はほうきで掃いて雑巾で乾拭き
- 掃除機を使ってもよいが、よごれを掃き出すほうきの方が畳掃除には向いている
- 畳は水分が苦手でカビの原因にもなるので、風通しを良くしてなるべく水拭きはしない
- 畳が傷つくのでコロコロは使わない
- 必ず畳の目に沿って掃除する
- シミをつけたらすぐに拭き取る
何気なく使っていた畳ですが、日本の風土にあった素晴らしい床材だったんですね。でもその反面、気をつけないといけない事も多いです。寝転んだり、素足で過ごす畳。ぜひ、正しい掃除方法でいつでも清潔に保っていたいですよね。